労務、労働問題

1.労務、労働問題

法人のご相談を受ける中で日々実感することは、経営者の皆様にとって労働問題は非常に大きな悩みの種であるということです。
労働問題と企業経営は表裏一体の関係にあるといっても過言ではありません。
「どこの会社でもあることだから……」そう思って放置してしまうこともあるかもしれません。
ですが、些細なことに思われた労働問題への対応を誤れば、会社の経営全体を揺るがすトラブルにも発展しかねません。当事務所では、経営者の皆様が労働問題に巻き込まれることを未然に防止するとともに、万が一労働問題が発生してしまった場合には、最適な解決を実行いたします。

2.よくあるトラブル事例

(1)未払い残業代請求トラブル

従業員が退職後に、過去にさかのぼって残業代を計算し、内容証明郵便などで請求してくるのが典型的なケースです。過去2年分の残業代をさかのぼって請求されることが通常で、その金額は数百万円になることもあります。

最初は従業員本人から文書あるいは口頭での請求があるケースが多いですが、放置すると、弁護士からの内容証明郵便や労働基準監督署の立ち入り調査、場合によっては労働審判や訴訟に発展するリスクがあります。残業代については退職後は14.6%という高利の遅延損害金がつくこと、また、裁判になれば付加金と呼ばれるペナルティ的な意味合いを持つ金銭の支払いを命じられることもあることから、解決が遅れれば遅れるほど、問題が大きくなる危険があります。さらに、他の従業員への波及する可能性にも注意する必要があります。

会社としては、まず、相手の勤務実態を調査し、相手が主張する労働時間に間違いがないか確認してください。その上で、その資料をもって、弁護士に相談されることをお勧めします。

労働諸法に精通した弁護士であれば、適切な残業代を算出した上で、不当な要求をする相手に対して十分な反論をいたします。また、労働基準監督署に対しても、弁護士に依頼していると伝えることで、行政処分等を回避することも期待できます。

さらに、当事務所の場合、当該事案を処理するだけでなく、今後、残業問題の発生を未然に防止するためのアドバイスもさせていただきます。

(2)従業員の不当解雇トラブル

従業員が解雇後に、不当解雇であると主張して復職させることを求めてくるケースにおいて、復職の主張と同時に、解雇後の期間の賃金あるいは不当解雇についての慰謝料の支払いを求められるケースが大半です。

最初は、内容証明郵便による不当解雇の主張、あるいは労働組合に加入して団体交渉で不当解雇の主張をしてくるケースが多いです。十分な対応をせず、放置すると、労働審判や労働裁判に発展するリスクがあります。解雇後の賃金の支払いを請求するケースが多いため、解決が遅れれば遅れるほど、金銭請求の額が増える傾向にあります。問題が裁判に発展し、1年、2年と長引くと請求金額が数百万円にも膨らむ可能性があります。

簡単には解雇できないということを知らず、安易に解雇の手続きを進めてしまった場合、被解雇者との間で紛争を招き、多大な労力を強いられることにもなりかねません。

したがって、解雇したい従業員がいる場合は、弁護士にご相談して頂き、その解雇事由を慎重に検討するとともに、慎重かつ適切な手続きを行わなければなりません。

(3)労働組合・ユニオンからの団体交渉の申入れ

従業員が外部の労働組合に加入し、団体交渉を求めるケースにおいて、労働組合によっては、多人数でおしかけて暴力的、威圧的な言動をしたり、会社に無理な要求をするケースもあります。

残業や解雇、配置転換、賃金の切り下げなどの労働問題のトラブルをきっかけとして、従業員が外部の労働組合に加入し、団体交渉を求めるケースが典型的です。従業員が労働組合に加入した後、突然、労働組合の組合員が会社を訪問し、日時を指定して団体交渉を求められることが多いです。その後、一定の頻度で、複数回にわたる団体交渉を求められます。不適切な交渉をしたり、団体交渉を拒否したりすると、不当労働行為の問題に発展するリスクがあります。また、労働組合による街宣活動やビラ配りに発展し、問題がさらに拡大してしまうリスクがあります。

当事務所には、労働組合との団体交渉実績の豊富な弁護士が在籍しています。的確に団体交渉を進める方法や、団体交渉へ同席し、貴社の労働組合との団体交渉を全面的にサポートします。

(4)労働審判を申し立てられた

残業代の請求や不当解雇の主張について従業員が会社に対して労働審判を起こすケースが典型例です。迅速に十分な対応をしなければ、会社に不利な解決内容となり、多額の金銭を支払うことになる危険があります。

会社に労働審判の申立書が届きます。労働審判は通常の裁判よりも早期に結論が事実上決まるという特徴があります。そのため、労働審判を起こされた場合は、会社側は早急に適切な対応をしなければ、労働審判での解決内容が会社側の主張を反映しない内容になってしまうリスクがあります。また、労働審判では解決せずに労働裁判に発展するリスクもあり、裁判のリスクも踏まえた対応が必要です。

また、労働審判は、第1回期日に労働審判委員会が主張と争点の整理を終えることが求められるので、申立てを受けた使用者は、原則として第1回期日の前に主張を記載した答弁書と証拠を全て提出しなければなりません。

しかも、申立てから40日以内に第1回期日が指定され、その1週間前までに反論の提出を求められるため、主張(反論)証拠を提出するまでに30日程度しか余裕がありません。

したがって、労働審判の申立書が届いたら直ちに弁護士に相談する必要があります。

(5)就業規則の作成・変更、リーガルチェック

就業規則は、労務トラブルの予防の基本となる重要な役割を担います。弁護士が関与せずに作成した就業規則では、労務トラブルや労務裁判の現場で通用せず、予想外の損害を被ることが少なくありません。

就業規則本則のほか、賃金規程、パートタイム就業規則、在宅勤務制度規則などの作成の依頼を多数承っています。就業規則は、裁判所でも通用する内容でなければ、実際のトラブルの解決の際に役立ちません。また、法改正や会社の実情の変化、賃金体系の変化に応じて、適宜変更が必要です。労働裁判や労働審判の現場を数多く経験し、トラブルの解決に精通した弁護士が就業規則を作成することで、真にトラブルの予防・解決に役立つ就業規則を作成することができます。

(6)退職勧奨に関するトラブル

会社が退職勧奨を行っても従業員が退職に応じなかったり、会社の退職勧奨が退職強要であるとして慰謝料を求められるケースが典型的です。また、いったんは退職に応じたが、退職を撤回したり、会社から解雇されたと主張して復職を求めるケースもあります。裁判所で退職強要あるいは不当解雇と判断されていしまうと、数百万円の支払いを命じられるリスクがあります。

従業員が退職勧奨に応じないケースでは、本来解雇すべき従業員についていつまでも賃金を支払うことになってしまったり、職場内での問題が長期化することにより、職場環境が悪化し、他の従業員にも悪影響を及ぼすこともあります。また、退職を撤回したり、不当解雇であるとして復職を求めるケースでは、対応を誤ると労働組合との団体交渉や、労働審判、訴訟に発展するリスクがあります。

法的紛争化のリスクを見据えた判断・手続が不可欠ですので、法的な労務管理の専門家である弁護士に相談するのが一番です。

退職勧奨を進めようとされるのであれば、弁護士のフォローを随時受けながら、適切な方法で行っていくことが不可欠です。お気軽にご相談ください。

(7)パワハラをめぐる労働環境トラブル

従業員からパワハラの被害を受けたとして、加害者の処分を求められたり、会社に対し損害賠償請求がされるケースが典型例です。

従業員からパワハラの被害の申告があった場合、対応を誤ると会社に対する損害賠償請求、場合によっては会社に対する裁判に発展するリスクがあります。パワハラが原因で精神疾患に罹患したと判断されたり、パワハラが原因となって退職に至ったと判断される場合、裁判所での慰謝料額は数百万円にのぼることもあります。

会社や部署ごとに環境が異なる状況でパワハラに該当するか否かを判断することは難しいでしょう。また、パワハラだと判断できた場合でも、適切な処置を講じることができなければ、そのことに対する責任が問われてしまいます。したがって、パワハラの相談や申告を受けた場合には、労働諸法に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

(8)セクハラをめぐる労働環境トラブル

従業員がセクハラを受けたとして、会社に加害者の処分を求めたり、損害賠償請求をしてくるケースが

従業員からのセクハラ被害の訴えや加害者に対する処分の要望に対して、会社が対応を誤ると、従業員からの損害賠償請求訴訟に発展するリスクがあります。セクハラの程度が重大であったり、セクハラが原因となって退職に至ったと判断される場合、裁判所での慰謝料額は数百万円にのぼることもあります。

企業にはセクハラを防止する措置を講じることと、セクハラの申告があった場合には、迅速かつ適切に対処することが求められます。これを怠ってセクハラ問題に関する訴訟を提起されてしまった場合は、会社の怠慢な対応が世間に公表されることになり、内外ともに会社の信用を失うことにもなりかねません。

「セクハラかどうか」「どう対処すべきか」といった判断が難しい場合には、早めに弁護士に相談し、具体的な事案に即したアドバイスをしたがって対処することが重要であるといえます。

後で取り返しのつかないことにならないためにも、問題の種が小さいうちに弁護士に相談しましょう。

(9)従業員のメンタルヘルスと休職に関するトラブル

従業員の精神疾患がきっかけとなって、職場環境が悪化したり、会社の休職の命令に従わないケース、精神疾患は過重労働やパワハラが原因であるとして従業員が会社に損害賠償請求をしてくるケースなどが典型例です。そのほか、会社が休職中の従業員の復職希望を拒否した場合のトラブルや、復職できない従業員を解雇した場合の解雇トラブルが発生することもあります。

被害妄想的な発言が多くなったり、遅刻や欠勤が目立つようになってくると精神疾患の兆候である可能性があります。精神疾患の罹患について会社に対する損害賠償請求がされたり、会社が休職中の従業員を復職させないことについて裁判で復職を求められるなどの事態に発展するリスクがあります。また、精神疾患で復職できないことを理由として会社が従業員を解雇するケースでは、対応を誤ると裁判所で不当解雇と判断され、従業員の復職と、数百万円にのぼる解雇後の賃金の支払いを命じられるリスクがあります。

メンタルヘルスは現在未然に防ぐための体制作りが非常に重要です。

リスクを避け、適正な労働安全管理を行うためには、労働実務を踏まえた判断・手続が不可欠ですので、法的な労務管理の専門家の労働弁護士に相談するのが一番です。

もし、メンタルヘルス対応を検討しているのであれば、労働弁護士のフォローを随時受けながら、適切な方法で行っていくことが不可欠です。

お気軽にご相談ください。